スライダと手計算で体感する
シミュレータでの見え方と、手計算で得た 1〜2 ステップの数値を往復し、式と挙動を結びつける。
ここではシミュレータを触りながら、1〜2 ステップ分は手計算でも追えるようにします。「動きを見る」と「式を追う」を往復すると、理解がかなり定着します。本章は次の流れで進みます: (1) シミュレータの操作方法を確認 → (2) スライダを動かして挙動を体感 → (3) 1〜2 ステップ目を手計算で追う → (4) 体感した挙動を言葉で説明する。
インタラクティブ・シミュレータ
真値・観測・推定・不確かさ帯を同時に表示します。スライダを変えたら リセット して、同じ系列をもう一度見比べてください。
見るべき 4 つ
- 灰色の観測点がどれだけ散っているか
- 青い推定線が観測をどれだけ追うか
- 薄青の帯(±σ)がどれだけ広いか
Kが 0 に近いか 1 に近いか
試してほしい操作
Qを上げて、モデルを疑うRを上げて、観測を疑うP₀を上げて、最初の数ステップの動きを見る- Seed を固定して条件だけ変え、挙動差を比較する
理解チェック 1 — 1 ステップ目を手で追う
初期値 x̂₀ = 10、P₀ = 1、Q = 1、R = 4、最初の観測 z₁ = 12 での 1 ステップ目を順に計算します。
Q1. 予測分散 P₁⁻ = P₀ + Q はいくつですか。
P₁⁻ = 1 + 1 = 2。
Q2. カルマンゲイン K₁ = P₁⁻ / (P₁⁻ + R) はいくつですか。
K₁ = 2 / (2 + 4) = 1/3 ≈ 0.333。
Q3. 更新後の推定値 x̂₁ はいくつですか。
イノベーションは 12 − 10 = 2、x̂₁ = 10 + (1/3) × 2 ≈ 10.667。
Q4. 更新後の分散 P₁ = (1 − K₁)P₁⁻ はいくつですか。
P₁ = (1 − 1/3) × 2 ≈ 1.333。観測を取り込んだぶん、推定の不確かさが少し小さくなりました。
シミュレータと手計算をつなぐ
シミュレータの読み出し欄には、その時点の x̂⁻、P⁻、K、イノベーション、更新後の x̂ と P を表示しています。1 ステップずつ進めながら、数式と画面が一致しているかを確かめてください。
理解チェック 2 — 2 ステップ目に引き継ぐ
1 ステップ目の結果 x̂₁ ≈ 10.667、P₁ ≈ 1.333 から、2 回目の観測 z₂ = 11 を処理します。
Q1. 予測分散 P₂⁻ = P₁ + Q はいくつですか。
P₂⁻ ≈ 1.333 + 1 = 2.333。
Q2. カルマンゲイン K₂ はいくつですか。
K₂ ≈ 2.333 / (2.333 + 4) ≈ 0.3684。
Q3. 更新後の推定値 x̂₂ はいくつですか。
イノベーションは 11 − 10.667 ≈ 0.333、x̂₂ ≈ 10.667 + 0.3684 × 0.333 ≈ 10.790。
Q4. 更新後の分散 P₂ はいくつですか。
P₂ ≈ (1 − 0.3684) × 2.333 ≈ 1.474。
理解チェック 3 — 挙動の特徴を言葉で説明する
シミュレータでスライダを動かしたときの挙動を、言葉で表現します。
Q1. シミュレータで R を大きく下げたとき、もっとも起きやすい変化はどれですか。
R を下げると観測をより信じるので、推定線は観測を強く追い、更新後の分散も下がりやすくなります。
Q2. 青い推定線を「なめらかだが少し遅れる」状態にしたいとき、もっとも近い設定はどれですか。
Q を小さく、R を大きくすると、モデル側を強く信じるので線は滑らかになりますが、変化への追従は遅れやすくなります。