予測ステップ — モデルから次の状態を予測する
定常モデルでは値はそのまま変わらない一方、不確かさは時間とともに増える。P⁻ = P + Q をケーススタディで確かめる。
カルマンフィルタは毎回いきなり観測をそのまま使うことはしません。まずモデルを使って「次はこうなるだろう」と予測し、そのあとで観測と混ぜます。
この講座のモデルは最小構成
ここでは 1 次元の 定常モデル だけを使います。定常モデルとは「対象は動かない(位置が変わらない)」と仮定するモデルで、「次の時刻も、ひとまず前回と同じ値だろう」と置きます。
x̂⁻ = x̂この単純化のおかげで、今大事な 予測と更新の役割分担 に集中できます。
不確かさは時間とともに増える
値そのものは変わらなくても、未来に行くほど不確かさは増えます。これを分散 P で表し、予測では次の式で更新します。
P⁻ = P + QQ は「モデルがどれくらい外れやすいか」を表す量です。観測が来ないまま進むほど、P は増えていきます。
理解チェック 1 — 予測ステップを手で追う
前時刻の推定から予測 x̂⁻ と予測分散 P⁻ をつくります。
Q1. 前時刻の推定が x̂ = 12、P = 4、Q = 1.5 のとき、定常モデルの予測値 x̂⁻ はいくつですか。
定常モデルでは x̂⁻ = x̂ なので、値は 12 のまま変わりません。
Q2. 同じ条件で、予測分散 P⁻ はいくつですか。
P⁻ = P + Q = 4 + 1.5 = 5.5。値そのものは変わらなくても、不確かさは少し増えます。
Q3. 初期分散 P₀ = 2、Q = 0.5 のとき、観測が来ないまま予測だけを 3 回続けたときの分散はいくつですか。
2 + 0.5 + 0.5 + 0.5 = 3.5。観測が来ないほど、予測だけでは不確かさが増えていきます。
Q の大小で挙動が変わる
理解チェック 2 — Q の役割を掴む
Q を変えたケース A・B を比べ、Q が何を表すかを言葉で説明します。
Q1. 直前の分散 P = 1、Q = 0.01 のときの予測分散 P⁻ はいくつですか。
P⁻ = 1 + 0.01 = 1.01。Q が小さいので、不確かさはほとんど増えません。
Q2. 同じ P = 1、Q = 4.0 のときの予測分散 P⁻ はいくつですか。
P⁻ = 1 + 4.0 = 5.0。Q が大きいほど、予測の不確かさはすばやく増えます。
Q3. Q がかなり小さいケースを、もっとも自然に表している説明はどれですか。
正解は 1 です。Q が小さいということはモデルがよく当たるとみなしている状態なので、予測を強めに信じやすくなります。
この章で持ち帰る直感
予測は「値はそのまま変わらず、不確かさは少しずつ増える」操作です。次章では観測が来たときに、この予測をどれだけ動かすかを見ます。