更新ステップ — 観測で予測を修正する
観測と予測の差(イノベーション)を、カルマンゲインの割合だけ使って予測を更新する手順を数で追う。
予測ができたら、次は観測を見て修正します。修正量を決める中心は、観測と予測の差(イノベーション)です。
観測と予測の差(イノベーション)
観測と予測の差を y = z − x̂⁻ と置きます。これが正なら観測は予測より上、負なら下です。この差は「予測しきれなかった分の新しい情報」を表すため、英語では innovation(イノベーション)と呼ばれます。本講座では、以後も 観測と予測の差(イノベーション) と日本語と併記します。
y = z − x̂⁻観測でどれだけ予測を修正するか
観測と予測の差をそのまま全部使うのではなく、カルマンゲイン K を掛けたぶんだけ修正します。K の中身(P⁻ と R から決まる式)は次章で扱います。
x̂ = x̂⁻ + K yK が 0 に近ければ予測寄り、1 に近ければ観測寄りです。
理解チェック 1 — 観測と予測の差(イノベーション)で観測を取り込む
観測と予測の差(イノベーション)y = z − x̂⁻ とカルマンゲイン K を使って、推定を 1 ステップ動かします。なお、K の中身は次章で扱うので、ここでは値を与えられたものとして使ってください。
Q1. 予測値 x̂⁻ = 10、観測 z = 14 のとき、観測と予測の差(イノベーション)y はいくつですか。
y = 14 − 10 = 4。差が正のとき、観測は予測より上にあります。
Q2. 続けて K = 0.25 のとき、更新後の推定値 x̂ はいくつですか。
x̂ = x̂⁻ + K y = 10 + 0.25 × 4 = 11。観測側へ 25% だけ寄せた形になります。
Q3. 予測値 x̂⁻ = 18、観測 z = 10 のとき、観測と予測の差(イノベーション)y はいくつですか。
y = 10 − 18 = −8。観測が予測より小さいと、この差は負になります。
Q4. 続けて K = 0.75 のとき、更新後の推定値 x̂ はいくつですか。
x̂ = 18 + 0.75 × (−8) = 12。差が負のとき、推定は下方向に引き戻されます。
観測を取り込んだあと、不確かさは下がる
観測を取り込んだあとは、推定の不確かさも更新します。これは更新ステップの 2 つ目の重要な式 で、推定値の修正と並んで必ず一緒に計算します。
P = (1 − K)P⁻信頼できる観測を取り込んだぶん、更新後の分散 P は必ず小さくなります(R > 0 なら 0 < K < 1 なので、P = (1 − K)P⁻ < P⁻)。
理解チェック 2 — 更新後の分散と極端な K
更新後の分散 P を計算し、K が極端な値になるケースを考えます。
Q1. 予測分散 P⁻ = 8、K = 0.25 のとき、更新後の分散 P = (1 − K)P⁻ はいくつですか。
P = 0.75 × 8 = 6。観測を取り込んだあと、推定の不確かさは小さくなります。
Q2. K = 0 のときの更新として正しいものはどれですか。
K = 0 のとき x̂ = x̂⁻ で、観測は使われません。極端に予測だけを信じる状態です。
Q3. K = 1 のときの更新として正しいものはどれですか。
K = 1 のとき x̂ = z。観測を全面的に採用し、更新後の分散も 0 になります。
この章で持ち帰る直感
更新は「観測との差を、どれだけ信じるかに応じて混ぜる」操作です。次章では、この「どれだけ信じるか」を決める K の中身を見ます。