カルマンゲイン — 予測と観測のどちらをどれだけ信じるか
カルマンゲイン K は「予測と観測のどちらをどれだけ信じるか」を決める。Q と R の比が挙動を支配する感覚を掴む。
この章の主役はカルマンゲイン K です。スカラー版では式が非常に単純なので、何が起きているかを直感的に理解しやすくなります。
K を決める式
K = P⁻ / (P⁻ + R)P⁻ が大きいほど「予測は怪しい」、R が大きいほど「観測は怪しい」です。分子と分母の関係だけで、どちらをどれだけ信じるかが決まります。
この形が出てくる理由は、推定値を x̂ = (1 − K)x̂⁻ + K z と線形に混ぜたとき、更新後の分散 P = (1 − K)² P⁻ + K² R を最小にする K を求めると K = P⁻ / (P⁻ + R) になるからです。つまりカルマンゲインは「予測と観測を線形に混ぜたとき、混ぜた後の不確かさが最小になるような重み」になっています。最適 K を代入して整理すると、本文で使う P = (1 − K)P⁻ という簡約形になります。本講座では、この導出は天下りに受け取り、分子に予測の不確かさ、分母に予測と観測の不確かさの和 という形だけ覚えれば十分です。
理解チェック 1 — K を式で出す
K = P⁻ / (P⁻ + R) の分子と分母で、何をどれだけ信じるかを考えます。
Q1. 予測分散 P⁻ = 9、観測ノイズ R = 1 のとき、カルマンゲイン K はいくつですか。
K = 9 / (9 + 1) = 0.9。観測ノイズが小さいので、観測をかなり強く信じます。
Q2. 予測分散 P⁻ = 1、観測ノイズ R = 9 のとき、カルマンゲイン K はいくつですか。
K = 1 / (1 + 9) = 0.1。観測がかなり不確かなので、予測側を強めに残します。
Q は P⁻ を通して K に効く
Q は直接 K に入っていませんが、P⁻ = P + Q を通じて効きます。モデルを疑うほど、予測分散は大きくなり、観測寄りに動きやすくなります。
理解チェック 2 — Q は P⁻ を通して K に効く
P = 2、Q = 3、R = 5 で、まず P⁻、次に K を出します。
Q1. 予測分散 P⁻ = P + Q はいくつですか。
P⁻ = 2 + 3 = 5。Q の効果はまずここに現れます。
Q2. 続けてカルマンゲイン K = P⁻ / (P⁻ + R) はいくつですか。
K = 5 / (5 + 5) = 0.5。Q は P⁻ を通して K に効きます。
Q3. R を固定したまま Q を大きくすると、一般にカルマンゲイン K はどうなりますか。
Q が増えると P⁻ = P + Q が大きくなり、観測側に寄せる割合 K も大きくなります。
更新後の分散まで一気につなげる
K を求めたら、更新後の推定値だけでなく更新後の分散まで必ずつなげて確認しましょう。これで次の時刻の予測が始められます。
理解チェック 3 — K から更新後の分散までつなげる
K を求めたら、更新後の推定だけでなく分散 P = (1 − K)P⁻ まで必ず一緒に出します。
Q1. 予測分散 P⁻ = 5、観測ノイズ R = 5 のとき、カルマンゲイン K はいくつですか。
K = 5 / (5 + 5) = 0.5。予測と観測を半分ずつ信じる状態です。
Q2. 続けて更新後の分散 P = (1 − K)P⁻ はいくつですか。
P = (1 − 0.5) × 5 = 2.5。観測を 50% だけ採用したあと、不確かさ(分散)は半分に減少します。
この章で持ち帰る直感
カルマンゲインは「予測と観測のどちらをどれだけ信じるか」を 1 つの数にまとめたものです。Q と R の比を変えるだけで、挙動の特徴が決まります。