スライダで体感する
音速・波長・吸収・TL・往復時間・DI・受動/能動 SNR を 1 画面に集約し、プリセットで支配項を読む。
何を表示するか
- 音速 c — Mackenzie の近似式から計算
- 波長 λ —
c / f - 吸収係数 α — 教材用の周波数依存近似
- 片道 TL — 拡散 + 吸収
- 往復時間 —
2R / c - DI —
10 log10(N)の理想近似 - passive / active SNR — 簡略式による見積もり
実海域の音響はこれよりはるかに複雑ですが、入門としては、何が 1 次で効くかをこの 1 画面で追えれば十分です。
吸収係数 α の近似式(教育用簡略式)
本シミュレータと第 7 章の最小実装では、周波数 f [kHz] から吸収係数 α [dB/km] を次の 教材用簡略式 で計算しています。
α [dB/km] = 0.11 · f² / (1 + f²)
+ 44 · f² / (4100 + f²)
+ 0.000275 · f²
+ 0.003
この式は、François-Garrison (1982) や Ainslie-McColm (1998) のフルモデルの形を簡略化したもので、温度・塩分・pH・深さの依存性を省略し、周波数のみの関数としています。各項は次の物理過程に対応しています。
- 第 1 項
0.11 f² / (1 + f²): ホウ酸 (B(OH)₃) の緩和による吸収(低周波領域、約 1 kHz 以下で支配的)。 - 第 2 項
44 f² / (4100 + f²): 硫酸マグネシウム (MgSO₄) の緩和による吸収(中周波領域、数十 kHz まで支配的)。 - 第 3 項
0.000275 f²: 純水の粘性による吸収(高周波領域、数百 kHz 以上で支配的)。 - 第 4 項
0.003: 計算の数値的下限を保つための定数項(教材用)。
本式は典型的な海水(水温 10°C、塩分 35 PSU、深さ 100 m 程度)での値の概算であり、現場設計では温度・塩分・pH・深さを含む完全な François-Garrison 式や Ainslie-McColm 式を使ってください。
プリセットのパラメータ詳細
各プリセットボタンが設定する具体的な値は次の通りです。
| プリセット | モード | 水温 | 塩分 | 深さ | 周波数 | 距離 | SL | TS | NL | N | 拡散係数 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 浅海・短距離 | 能動 | 18 °C | 35 PSU | 30 m | 30 kHz | 300 m | 210 dB | −18 dB | 65 dB | 8 | 20 |
| 中距離 | 能動 | 10 °C | 35 PSU | 200 m | 12 kHz | 2500 m | 215 dB | −12 dB | 70 dB | 16 | 20 |
| 高周波・減衰大 | 能動 | 8 °C | 35 PSU | 100 m | 120 kHz | 800 m | 220 dB | −25 dB | 60 dB | 8 | 20 |
| 受動監聴 | 受動 | 12 °C | 35 PSU | 500 m | 1.5 kHz | 6000 m | 170 dB | −15 dB | 75 dB | 32 | 15 |
例えば 高周波・減衰大 プリセットでは、120 kHz の高周波が 800 m を伝搬する際に吸収が大きく効き、active SNR が約 −33 dB まで低下します。シミュレータを操作する前に、これらの数値で予想を立ててから動かすと支配項が読みやすくなります。
SO101 ソナーシミュレータ
passive SNR
active SNR
TL vs 距離
現在の周波数と拡散係数で、距離に対する片道 TL の増え方を表示します。
シミュレータ設定はこのブラウザの localStorage にのみ保存されます。教材用の簡略モデルなので、現場設計には屈折・境界散乱・残響・詳細吸収モデルを追加してください。
まず見てほしい 4 つの変化
- 距離を伸ばす と、TL が増えて SNR が下がる。
- 周波数を上げる と、波長は短くなるが吸収が増えやすい。
- 素子数を増やす と、DI が増えて雑音に対して有利になる。
- 能動 は
2TLのぶん遠距離で急に厳しくなりやすい。
この章の理解チェック
シミュレータの 4 つのプリセットで表示される値を読み取ります。
Q1. シミュレータで 浅海・短距離 プリセットを押してください。表示される 往復時間 はおよそ何 ms ですか。
おおよそ 0.396 秒なので、ms に直してください。
浅海・短距離プリセットでは往復時間は約 0.396 s、つまり約 396 ms です。
Q2. 中距離 プリセットを押してください。表示される 片道伝搬損失 TL はおよそ何 dB ですか。
72 dB 台前半です。
中距離プリセットの片道 TL は約 72.1 dB です。
Q3. 受動監聴 プリセットを押してください。表示される DI(理想配列利得近似)はおよそ何 dB ですか。
32 素子なので 10 log10(32) をイメージしてください。
受動監聴プリセットは 32 素子なので、DI は約 15.1 dB です。
Q4. 高周波・減衰大 プリセットを押したとき、表示される active SNR はどの領域にありますか。
高周波化で吸収が大きくなり、能動 SNR は大幅に低下します。
高周波・減衰大プリセットでは active SNR は約 −33 dB で、検出には極めて厳しい設定です。
この章で持ち帰ること
- 距離、周波数、素子数の 3 つを動かすと、TL と SNR の支配項が見えてくる。
- 高周波は短波長だが、吸収が増えやすい。
- active は遠距離で 2TL が効いて急に厳しくなりやすい。