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第 3 章

受動 / 能動ソナー — 何を聞き、どう測るか

受動ソナーと能動ソナーを、方程式に出てくる量の違いから整理する。target radiated sound と echo を混同しないことが目標。

受動は target radiated sound を聞く

受動ソナーは、対象が自分で出している音を使います。船の機械音、プロペラ音、海洋生物の発声、流体雑音などが対象です。こちらは自分では送信しないので、送信由来の位置露出を避けたい監視 や、環境音の継続観測と相性が良いです。

ただし、対象が静かな場合、受動では検出が困難になります。単独のハイドロフォンだけでは距離を直接出しにくい、という弱点もあります。

第 2 章から第 3 章への橋渡し

第 2 章では音速・波長・往復時間という 音響物理の基礎 を整理しました。距離 = c × t / 2 という基本式は、音が 送信機 → 目標 → 受信機 という経路を辿る場合に成り立ちます。本章ではこの経路の取り方が受動と能動で異なる点に注目します。受動では 目標 → 受信機 の片道、能動では 送信機 → 目標 → 受信機 の往復経路となるため、伝搬損失 (TL) を 1 回分扱うか 2 回分扱うかが変わります。第 4 章で SNR 式に TL2TL が出てくる根拠が、ここから決まります。

モノスタティック / バイスタティックの定義

能動ソナーは、送信機と受信機の配置によって 2 種類に分類されます。

  • モノスタティック (monostatic): 送信機と受信機がほぼ同じ位置にある構成。船底のソナーや echosounder のように、自分が出した ping の echo を自分で聞く形態が代表例です。
  • バイスタティック (bistatic): 送信機と受信機が離れた位置にある構成。離れた送受信点を使うことで、対象の位置を別の幾何で推定できますが、同期や較正が必要になります。

本講座の SNR 式や TL の扱いは、特に断らない限りモノスタティック構成を前提にしています。

受動は「聞く」、能動は「送って返りを聞く」 受動は target radiated sound、能動は echo を使う。 受動ソナー 送信なし 対象が出す音を聞く 能動ソナー ping echo 往復時間と echo 強度を読む

能動は echo を見る

能動ソナーは自分で ping を出し、その反射を聞きます。ここでは TS (Target Strength) が効いてきます。TS は、対象がどれだけ音をソナー側へ返しやすいかを表す量です。反射が強い対象ほど、echo を拾いやすくなります。

能動の基礎式に 2TL が出るのは、音が 往路復路 の 2 回、伝搬損失を受けるからです。受動は対象 → 受信機の片道なので、まず 1 回分の TL を考えます。

何が分かりやすくて、何が分かりにくいか

単純化すると、能動は距離が分かりやすい、受動は非送信監視がしやすい。これが入門のまとめです。もちろん実際には、アレイ処理・追尾・周波数分析・複数受信点などで両者とも多くの情報を引き出せますが、最初はこの違いだけで十分です。

受動
listen only / 非送信 / 単独では距離を直接出しにくい
能動
ping + echo / TS が効く / 往復時間で距離が出しやすい

この章の理解チェック

受動と能動の違い、TS の位置づけ、2TL の意味を確認します。

Q1. 対象が自分で出す音を使うのはどちらか。対象から放射される音そのものを利用して検出するのはどちらですか。

radiated sound を聞くのは passive です。

Q2. TS が前面に出るのはどちらか。基礎的なソナー方程式の中で、Target Strength (TS) がそのまま入ってくるのは主にどちらですか。

echo の強さを考える方式です。

Q3. 能動式で 2TL になる理由。能動ソナーの簡略式に 2TL が出てくる理由として最も適切なものを選んでください。

送信機 → 目標 → 受信機の経路を図に描いてみると見えます。

Q4. 静かながら反射しやすい対象に向くのは。対象がほとんど音を出さない一方で、音を当てれば反射はそこそこ返すとします。基礎的に見ると、どちらが直接検出しやすいですか。

passive は target radiated sound が前提です。

Q5. 単独ハイドロフォンの受動観測で直接出にくい量。単独のハイドロフォン 1 本だけで受動的に聞いているとき、最も直接には分かりにくい量はどれですか。

active なら往復時間、array なら bearing もありますが、1 本 passive は情報が少ないです。

この章で持ち帰ること

  • 受動は対象が出す音を聞き、能動は ping の echo を使う。
  • TS が直接前面に出るのは、反射を扱う能動ソナーである。
  • 能動は 2TL、受動はまず 1 回ぶんの TL を意識する。