X連鎖・ミトコンドリア・染色体数の変化
常染色体だけでは説明しきれない受けつがれ方と、染色体レベルの変化を区別する。
この章で使うことば
この章で使う「見方」
講座トップで挙げた 5 つの見方のうち、この章では 「3. 受けつがれ方を分ける」 を集中して練習します。常染色体・X 連鎖・ミトコンドリア・de novo を混同せず、それぞれの渡り方を整理します。
この章では、教科書の XX/XY モデルで説明する
この章では、学校の教科書でよく使われる XX/XY モデル を使って、X 連鎖の基本をつかみます。現実の性のあり方はこれより多様ですが、まずは受けつがれ方の考え方を学ぶための単純化です。各設問・各図でも「これは XX/XY モデル上での話」という前提を、その都度思い出してください。
X連鎖では、父から息子へ X は渡らない
X連鎖の問題で最も重要なのは、父は娘へ X、息子へ Y を渡す という点です(XX/XY モデル上)。ここを逆に想像すると、家系図の読み方が一気に混乱します。
だから、X 連鎖の入門問題ではまず 「今見ている子は息子か娘か」 を確認します。同じ親の組み合わせでも、息子だけを見た確率と、娘だけを見た確率は同じとは限りません。
ミトコンドリアDNA は通常母系で追う
ミトコンドリアにも DNA があります。入門では、これは 通常は母から子へ伝わる と整理すると理解しやすいです。
つまり、家系をたどるときには 母側のつながり をまず見ます。父から通常は伝わらない、というのがこの章の基本ルールです。
理解チェック 1 — X連鎖とミトコンドリア
XX/XY モデルでの渡り方と、mtDNA の母系遺伝を確かめます。
Q1. X連鎖劣性の入門モデルで、母が保因者 X^A X^a、父が X^A Y のとき、「息子に限って」症状が出る確率は何%ですか。
息子は父からY、母からXを受け取ります。
この組み合わせでは、息子は母から X^A か X^a を受け取ります。息子に限れば 50% で症状が出ると整理します。
Q2. 教科書的な XX/XY モデルで、父から子どもへの性染色体の渡り方として、最も適切なものはどれですか。
父は娘へ X、息子へ Y を渡します。
入門モデルでは、父は X を娘へ、Y を息子へ渡します。そのため X連鎖では『父から息子へXを渡す』と考えません。
Q3. ミトコンドリアDNA(mtDNA)の遺伝について、入門的な説明として最も適切なものはどれですか。
次世代へ通常伝えるのは母側です。
ミトコンドリアDNAは、通常は卵由来のミトコンドリアを通じて子へ伝わるため、入門では母系で追うと整理します。
前例がなくても、遺伝的な原因はありうる
家系図に同じ病気の人が見当たらないと、「遺伝ではない」と考えがちです。しかし、de novo バリアント のように、その家系で新しく生じることもあります。
具体的な例: 重い知的障害や発達症のかなりの割合、ある種の小児がん、軟骨無形成症のような骨格疾患など、両親に同じ症状がなくても子に 新たに 生じたバリアントが原因と分かるケースが知られています。発生頻度はバリアントの種類によりますが、入門段階では「家系に前例がない病気でも、遺伝的要因がゼロとは限らない」と理解しておけば十分です。
だから、前例がない = 遺伝的要因がゼロ とは言えません。家系図は大きな手がかりですが、万能ではありません。
配列の変化と染色体の変化は別レイヤー
遺伝の話には、少なくとも 2 つのレイヤーがあります。
同じ「遺伝の変化」でも、文字の並びが変わったのか、本数そのものが変わったのか で、見ているレイヤーが違います。
受けつがれ方を切り替えて比べる
よくある勘違い: 父から息子へ X が渡る、とは考えません。父は息子へ Y を渡します。家系図に前例がないから、遺伝的要因は絶対にない、とは言えません。塩基1文字の変化と、染色体の本数の変化は同じものではありません。
理解チェック 2 — de novo と染色体レベルの変化
配列レベルと染色体レベルを分け、前例のない遺伝的要因についても考えます。
Q4. de novo variant(新しく生じたバリアント)の説明として、最も適切なものはどれですか。
家系図に前例がなくても起こりえます。
de novo variant は、その家族の中で新しく生じたバリアントを指します。両親から受けついだとは限りません。
Q5. 「染色体数の変化」の例として、最も適切なものはどれですか。
文字1つではなく、染色体全体の本数に注目します。
染色体数の変化は、塩基1つの変化ではなく、染色体そのものの本数が増減するような変化です。
Q6. 家系図に同じ病気の前例が見当たらないのに、遺伝的な原因が関わりうる説明として、最も適切なものはどれですか。
前例がない=遺伝ではない、とは言い切れません。
家族歴が目立たなくても、de novo variant や浸透率の違いなどで遺伝的要因が関わることがあります。
この章で持ち帰ること
- X連鎖では、父から娘へ X、息子へ Y を渡すと考えます。
- ミトコンドリアDNAは、入門では通常母系で追います。
- 家系図に前例がなくても、de novo バリアントなどで遺伝的要因はありえます。
- 配列レベルの変化と、染色体レベルの変化は別のレイヤーで考えます。