メンデル遺伝 — 優性・劣性・保因者を確率で読む
4マスの表で、優性・劣性・保因者・各妊娠ごとの確率を整理する。
この章で使うことば
この章で使う「見方」
講座トップで挙げた 5 つの見方のうち、この章では 「3. 受けつがれ方を分ける」 と 「4. 確率の条件を確かめる」 を集中して練習します。常染色体優性 / 劣性を 4 マスの表で読み、各妊娠ごとの確率と条件つき確率を区別する感覚をつくります。
優性と劣性は「強い / 弱い」ではない
遺伝の話でよく出る 優性(dominant) と 劣性(recessive) は、日常語の「優れている」「劣っている」とは意味が違います。
この章では、分かりやすさのために A と a はただのラベル として使います。A が「良い」、a が「悪い」という意味ではありません。
4マスの表で見ると、確率を見失いにくい
親から子へ渡るのは、各遺伝子座について1つずつです。だから、親 2 人がそれぞれどの対立遺伝子を渡しうるかを書き、4マスの表(Punnett square) にすると、組み合わせが見やすくなります。
たとえば A/a × A/a なら、子どもの組み合わせは AA・Aa・Aa・aa の4通りです。4つが同じ確率で並ぶので、a/a は 1/4、A/a は 2/4 と読み取れます。
この章の「優性 / 劣性」は、表現型の出方を分けるための入門モデルです。強い / 弱い、良い / 悪い、という意味ではありません。
理解チェック 1 — 4マスの表で比率を読む
親の組み合わせごとに、子の遺伝子型の割合を 4 マスで整理します。
Q1. 常染色体劣性の入門モデルで、両親がともに保因者 A/a のとき、子どもが a/a になる確率は何%ですか。
4マスの表を書くと、AA・Aa・Aa・aa になります。
A/a × A/a では、4通りのうち a/a は1通りなので 25% です。
Q2. 常染色体劣性の入門モデルで、片方が保因者 A/a、もう片方が a/a のとき、子どもが a/a になる確率は何%ですか。
A/a × a/a を4マスで書いてみましょう。
A/a × a/a では、Aa・aa・Aa・aa となるので a/a は 2/4、つまり 50% です。
Q3. 常染色体優性の入門モデルで、片方が A/a、もう片方が a/a のとき、A を受け取る子どもの割合は何%ですか。
A/a の親の配偶子は A と a が半々です。
A/a × a/a では、A/a と a/a が半々になります。A を受け取る子どもは 50% です。
保因者と各妊娠ごとの確率
保因者(carrier) という言葉は、文脈によって少し意味が変わりますが、入門では「病気に関わるバリアントを 1 コピー持ち、次世代へ渡しうる人」と考えると分かりやすいです。
また、ここでとても大事なのが 各妊娠ごとの確率 です。前の子がどうだったかで、次の子の4マス表が自動的に変わるわけではありません。コイン投げで、前に表が出たから次は裏が出やすくなるわけではないのと同じです。
「分かったあと」の確率は、条件をかけて考える
応用的には、「すでに a/a ではないと分かったあと」 のような条件つきの読み方が出てきます。このときは元の4通りから、ありえないものをのぞいて考えます。
たとえば A/a × A/a の子どもで a/a ではない と分かったなら、残るのは AA・Aa・Aa の3通りです。そのうち保因者 A/a は 2 通りなので、2/3 になります。
よくある勘違い: 優性 = すぐれた形質、劣性 = 劣った形質、ではありません。前の子の結果で、次の子の確率が「帳尻合わせ」されるわけではありません。保因者という言葉は、常に同じ意味で使われるとは限りません。まず文脈を見ることが大切です。
理解チェック 2 — 保因者と条件つきの確率
保因者の定義と、各妊娠ごとの独立性、そして条件つき確率の読み方を押さえます。
Q4. この章でいう「保因者(carrier)」の説明として、最も適切なものはどれですか。
常染色体劣性の文脈で考えると分かりやすいです。
入門では、保因者は病気に関わるバリアントを1コピー持つが、典型的には発症型ではない人を指します。
Q5. 各妊娠ごとの確率の考え方として、あてはまらないものはどれですか。
前の子の結果で、次の配偶子の作られ方そのものは変わりません。
同じ親の組み合わせなら、各妊娠の確率は毎回あらためて同じように考えます。前の子の結果で次の 4 マス表の比率が書き換わるわけではありません。
Q6. A/a × A/a の子どもについて、「発症型 a/a ではない」と分かったあと、その子が保因者 A/a である確率はいくつですか。
a/a をのぞくと、残るのは AA・Aa・Aa の3通りです。
A/a × A/a の全体は AA・Aa・Aa・aa です。a/a ではないと分かったあとは AA・Aa・Aa の3通りなので、保因者は 2/3 です。
この章で持ち帰ること
- 優性 / 劣性は、表現型の出方を分ける言葉です。
- 4マスの表で組み合わせを書くと、比率を見失いにくくなります。
- 保因者は、入門では「1コピー持つ人」と考えると分かりやすいです。
- 各妊娠の確率は毎回あらためて考えます。
- 条件つきの確率では、ありえない組み合わせをのぞいて考えます。
次の章へのつなぎ
この章では、4 マスの表ですべて整理できる「メンデル遺伝」を扱いました。しかし、すべての遺伝がこのパターンに従うわけではありません。たとえば X 染色体上の遺伝子は、男女で持っている本数が違うため 4 マス表をそのままでは使えません。ミトコンドリア DNA は両親から半々ではなく、通常は母から子へ伝わります。次の章では、こうした 常染色体メンデル遺伝だけでは説明しきれない受けつがれ方 を整理します。