総合演習と全問レビュー
個別の知識をケース問題でつなぎ、どこで平衡・速度・分離・再循環・原料調整を考えるかを言えるようにする。
最後は『反応式』ではなく『ループ全体』で説明する
ここまで来たら、単に N₂ + 3H₂ ⇌ 2NH₃ を言えるだけでは足りません。どこで平衡を見て、どこで速度を見て、どこで分離・再循環・パージを考えるのかを一つの流れとして説明できることがゴールです。
次のケース問題では、『どこがおかしくなるか』を先に考えます。トラブルから逆算すると、各装置の意味が定着しやすいからです。
総合演習で使う視点
| 章 | この章で使う見方 |
|---|---|
| 第 1 章 | なぜ空気からアンモニアを作るのか、前段と後段の切り分け |
| 第 2 章 | N₂ + 3H₂ ⇌ 2NH₃ の量論と可逆性 |
| 第 3 章 | 温度・圧力と平衡の向きと速度のトレードオフ |
| 第 4 章 | 鉄触媒・プロモータ・触媒毒・不活性の違い |
| 第 5 章 | 圧縮・反応・冷却分離・再循環・パージのループ |
| 第 6 章 | シミュレータで動かしたときの各指標の動き方 |
総合演習 7-1(小問 1〜3) — 温度・量論・分離
温度、量論、分離が崩れたとき何が起きるかを考えます。
Q1. あるチームが『平衡収率を上げたいから温度を一気に下げよう』と提案しました。最も適切な返しはどれですか。
平衡と速度の両方を同時に見てください。
低温化は平衡に有利でも、速度を落として生産性を悪化させます。だから実際には触媒や滞留時間も含めた妥協が必要です。
Q2. N₂ : H₂ の供給比が 1 : 2 にずれていた場合、最初に起きやすい問題として最も近いものはどれですか。
必要比は 1 : 3 でした。
N₂ : H₂ = 1 : 2 では H₂ が不足し、H₂ 側が制限試薬になりやすいため、量論どおりの合成を引っ張れません。
Q3. もし反応後の冷却・分離がうまく働かず NH₃ を十分に取り出せないと、ループ全体ではどうなりやすいですか。
製品を抜けないと、未反応ガスを効率よく再循環できなくなります。
NH₃ を十分に抜けないと、製品回収が悪化し、未反応ガスの再循環設計も不利になります。分離はループの重要部です。
総合演習 7-2(小問 4〜5) — パージと触媒毒
パージと触媒毒のトラブルを切り分けます。
Q4. アルゴンを含む原料を使っているのにパージ弁を極端に閉じた場合、最も警戒すべきことはどれですか。
触媒毒とは別の問題です。
パージを閉じすぎると不活性がループ内に蓄積し、反応物の分圧を下げて見かけの性能を落とします。
Q5. 前段の脱硫が破れて硫黄化合物が反応器へ入ったとき、最初に心配すべきユニットはどれですか。
硫黄は触媒に厳しい不純物でした。
硫黄化合物は代表的な触媒毒なので、最も警戒すべきは合成触媒の被毒です。ここが劣化するとループ全体の性能が落ちます。
総合演習 7-3(小問 6〜7) — グリーンアンモニアと全体像
グリーンアンモニア移行と全体像の要約を確認します。
Q6. 天然ガス改質由来の工場を、再エネ電解 H₂ を使うグリーンアンモニアへ寄せたとして、基本的に変わらないものはどれですか。
前段が変わっても、合成ループの中心反応はそのままです。
H₂ の由来は変わっても、合成ループの中心反応 N₂ + 3H₂ ⇌ 2NH₃ 自体は変わりません。窒素の元素記号も触媒毒の概念もそのままです。だから後段の知識はそのまま活きます。
Q7. ハーバー・ボッシュ法の全体像の要約として、最も適切なものはどれですか。
平衡・速度・分離・再循環・パージを一つのループとしてつなげます。
中心反応は可逆、触媒は速度側に効き、未反応ガスの再循環で原料利用率を稼ぎ、少量のパージで不活性蓄積を抑える —— この組み合わせがハーバー・ボッシュ法の骨格です。
この講座の着地点
- ハーバー・ボッシュ法を 反応器 1 個の話ではなく合成ループ全体の話として説明できる。
- 平衡と速度を分けて読み、低温・高圧は平衡に有利だが速度とコストで妥協することを言える。
- 触媒が効くのは 速度側で、平衡の向きそのものを直接ねじ曲げないことを区別できる。
- 不純物を 触媒毒と不活性に分け、前段精製とパージがそれぞれどちらを相手にしているかを整理できる。
- 再循環とパージはセットで、どちらか一方だけでは回らない理由を説明できる。
- グリーンアンモニアでは 前段の H₂ 供給が主に変わり、後段の合成ループ知識は引き続き活きる。
- 第 6 章のシミュレータで見た「平衡・速度・再循環・リスク」の動きを、反応・ループの言葉で言い換えられる。
次にやると定着しやすいこと
- 第 6 章のシミュレータでプリセットを一通り押し、各指標の動きを本文の用語で 1 文ずつ説明する。
- 『温度だけ下げる』『圧力だけ上げる』『触媒活性だけ下げる』を 1 変数ずつ動かして、平衡と速度のどちらに効いているかを切り分ける。
- 既存の天然ガス改質由来プラントをグリーンアンモニアへ寄せる場合、『変わるもの』と『変わらないもの』を自分の言葉で紙に書き出す。