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第 3 章

蒸留とカット — IBP / FBP と軽質・重質

ナフサを 1 つの沸点ではなく IBP から FBP までの幅で読み、軽質と重質の違いを下流との相性へつなげる。

このページで先に知っておく言葉

IBP(初留点)
蒸留で最初に液が出始める温度。
FBP(終点)
蒸留で最後まで出切る側の温度。
沸点範囲
混合物が沸き始めてから沸き終わるまでの温度の幅。
カット
どこからどこまでを製品として切り出すかという範囲。
軽質ナフサ
C5 / C6 が多めの軽い側のナフサ。
重質ナフサ
C7 以上が増えやすい重めのナフサ。

高校化学との橋渡し

純物質は「沸点が何 ℃」と 1 点で覚えることが多いですが、混合物ではそうはいきません。ナフサは混合物なので、どこで沸き始め、どこまで沸き終わるかという範囲で見ます。

蒸留では『範囲』を読む

ナフサは混合物なので、蒸留では IBP から FBP までの範囲で見ます。1 つの温度だけでは表しきれません。

蒸留曲線で初留点、カット点、終点を示した図

初留点 (IBP) を上げる = 沸点の低い成分を製品カットから外す。終点 (FBP) を上げる = 沸点の高い成分まで取り込む。どちらも「カットの両端を内側/外側へ動かす」操作です。

初留点を「上げる」と、その温度未満で蒸留される極端に軽い成分(揮発性が高く引火しやすい側)がカットから外れます。終点を「上げる」と、より高温まで蒸留を続けることになるので、重質側がカットに含まれます。要するに、IBP は軽い側の境界線、FBP は重い側の境界線です。

この講座では「どちらへ動くか」を読むので十分です。厳密な装置条件は実務資料に譲ります。

蒸留曲線の形 — プラトーとテーリング

実物の蒸留曲線(横軸: 留出量、縦軸: 温度)は単調に立ち上がるとは限りません。よく出てくる形は次の 2 つです。

プラトー
ある温度帯で曲線がほぼ平らになる部分。その温度付近に集中している成分が多いことを示します。
テーリング
後半で曲線が急に立ち上がる、または「尾を引く」形。重質側に少量の高沸点成分が残っていることを示します。

この講座では曲線の細部までは扱いませんが、「形からも組成のヒントが読める」ことだけ覚えておくと、現場の蒸留データを見たときに迷いにくくなります。

軽質ナフサと重質ナフサ

フルレンジのナフサをそのまま 1 つとして扱うより、軽い側と重い側に分けて考える方が下流との相性が見えます。

種類含まれやすい側見えやすい用途
軽質ナフサC5 / C6 が多め前段処理、異性化、水蒸気分解寄り
重質ナフサC7 以上が増えやすい改質、芳香族寄り

大まかに覚えるなら、軽質 = 揮発しやすい / 重質 = 改質とつながりやすいです。

カットを動かすと何が変わるか

カットを軽質側へ寄せると、平均炭素数は下がり、揮発性は上がります。逆に重質側へ寄せると、平均炭素数は上がり、揮発性は下がります。

軽質側へ寄せる
平均炭素数が下がり、蒸発しやすくなる。
重質側へ寄せる
平均炭素数が上がり、蒸発しにくくなる。

この変化だけでも、どの工程へ送りやすいかの読みがかなり変わります。

『同じナフサ』でも一定でない

ナフサという名前だけでは、現物は決まりません。どの原油を使ったか、どこでカットしたか、前処理したかで、沸点範囲も組成もずれます。

だから設計や調達の現場では、名前より先に 沸点範囲・組成・SDS・分析値を確認します。

この章のひとことでまとめ: 混合物であるナフサは、1 点の温度ではなく『沸点範囲』で読む。軽質か重質かで、下流の相性も変わります。

理解チェック — IBP / FBP と軽質・重質

IBP / FBP と軽質・重質の読み方を確認する 5 問です。

Q1. 初留点(IBP)と終点(FBP)が表しているものを選んでください。

Q2. カット点を軽質側へ動かすと、平均炭素数はどうなりやすいでしょうか。

Q3. どちらが改質の原料になりやすいでしょうか。

Q4. 分子群比率が同じまま重質側を多く含めると、相対揮発性はどうなりやすいでしょうか。

Q5. 同じ『ナフサ』でも実物が一定でない理由として正しいものを選んでください。

第 3 章のまとめ

  • ナフサは 1 点ではなく、IBP から FBP までの沸点範囲で読む。
  • 軽質側へ動かすと平均炭素数は下がり、揮発性は上がる。
  • 重質ナフサは改質との相性が見えやすい。